連詩「あかり」
のべるぶ
ぜひフォローしてね!してね!
【あかり】作:渡良セシボン&香澄
それは、灯った
やわらかく私の手の中に
まっくらな世界に
それは輪郭をあたえた
空っぽのカンテラから
色彩があふれ出して
走り出す軌跡に海が砕ける
そこに虚実などなかった
カンテラはまるで灯台のように
手の中のぬくもりは星のように
まだ巡り合わないふたりは
ふたりぼっち
ふたりぼっちは確かな光を
眼に映す
夜空を泳ぐ方舟が
瞬く星を帆に受けて
ふたりぼっちが夢で歩いた
雲霞の街へ沈んでく
花が散ったら逢いましょう
フリージアの咲く丘で
背表紙にぼんやり瞬く光
旅のみちづれはあの絵本
栞にした夢の花
記された君の名前が薄れていく
歩き疲れた旅の途中
灯りはひとりぼっちの影だけ作る
ひらひらと
空から落ちた小さな星が
水鏡へと溶けてゆく
世界の片隅、しぼんだ影
水面が映す銀河の花火
ひとりぼっちの眼には
こぼれるほどの光が弾け
ひとつしかない宝石を
なくさぬように水底に隠した
静かなここは さみしい場所
なんにも見えないこの場所で
宝石は静かに光を育くんでいく
それは散った花火より上にあがり
とうとう ふたりぼっちを照らしだす
あわあわ雲の夜空に
丘への道を照らしだす
逆さまでも、届かなくても
このあかりだけが道しるべ
散った銀河の花弁が
ふたりぼっちの丘に咲く
愛しさと幸せを抱くようようの
きれいな日々に祝福を
咲いたあかりに、祝福を。
0コメント